アレルギーの病気
アレルギーは、本来、病原体から身を守る免疫の働きが特定の食物を異物と見なして過剰に反応し、生体に様々な不利益な症状を起こす現象です。
アレルギーの病気には気管支喘息、花粉症(鼻アレルギー)、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などがあります。
成人気管支喘息
1)はじめに
風邪をひいたとき咳が長く続いたり、夜中や明け方に胸がゼーゼーして咳がひどく、息苦しくて眠れない、急いで信号を渡った時や冷たい空気を吸った時、また掃除をした時に咳がでる、ことはありませんか? こういう症状がある方は気管支喘息の可能性があります。
喘息患者さんはスポーツ、仕事や勉強、家事、睡眠などの日常生活の質(QOL)が悪化しています。
同じような症状は、肺気腫など他の呼吸器疾患、心不全の心臓病などでも起きますが、気管支喘息は正しい治療法により健康な生活が送れますので医療機関でしっかり診断して最新の治療をもらうことが大切です。
2)頻 度
気管支喘息の患者さんは、日本人の約5%、数百万人にも上り、増加傾向にあります。喘息と言いますと小児の時に発症する病気と思われがちですが、半数以上は20歳頃と40歳代の中年以降に発病します。以前は、1年間に数千人の方が喘息で亡くなっていましたが、30年前に登場したステロイド吸入薬を用いる治療法の進歩により喘息死は3分の1までに減っています。小児喘息と成人喘息は症状と治療法に違いがありますので、本日は成人喘息についてお話させていただきます。
3)どういう要因で発病するのでしょうか?
発病には遺伝因子と環境因子が関係します。両親、親戚に喘息、アレルギーが多くみられことから気管支が過敏な喘息体質とアレルギー体質が遺伝していると考えられます。喘息体質は、気管支がいろいろな刺激に敏感であるという体質です。環境因子は、アレルギーの原因物質(アレルゲンといいます)である室内ほこり、ダニ、花粉、カビ、ペットの毛の吸入、呼吸器の感染症、大気汚染、喫煙、食品添加物、薬物などがあり、その他に低気圧、台風などの気象、刺激臭、過労、精神的ストレス、月経・妊娠は喘息の状態を悪化させます。
4)喘息の呼吸困難は、どうしておきるのでしょうか?
喘息の呼吸困難の特徴は、夜間から早朝に急に息苦しさ、ゼーゼー(喘鳴)、咳が何日か繰り返しおきますが、しばらくすると自然に収まることです。掃除のほこりを吸い込んだ時や走ったり階段を上った時にも喘鳴、咳が出ることがありますが、しばらく休むと治ります。何らかの原因で気管支が過敏になっているところに環境因子に刺激されるとリンパ球、マスト細胞、好酸球からなるアレルギー炎症が起き、その結果、気管支が収縮して閉塞するため呼吸が苦しくなり、咳・痰がでます。この発作を何度も繰り返しますと気管支の粘膜は傷つき厚くなって終には少しの刺激でも発作が起きやすくなります。
しかし、喘息の病気が長いと今の症状に体がなれて、喘息の苦しさに本人自身が気づかないまま治療しないで症状が悪化すると、喘息死に至ることがあります。
5)喘息の診断と治療について
喘息かなと思ったらすぐ医療機関に受診して下さい。喘息かどうか診断するため詳しい問診調査、胸部のレントゲン撮影、血液検査や皮膚テストによるアレルゲンの探索、1秒量やピークフローなどの肺機能検査が行われます。同時に他の呼吸器疾患、心臓疾患がないかも検査されます。
そして、問診の情報と検査の結果をもとに、喘息症状がどのくらい重いか重症度の程度が診断され、治療法が選択されます。
6)喘息の治療の目標
治療の目標は、喘息発作がなく、運動や睡眠に支障なく、健常人と変わらない生活が送れること、肺機能が正常に近く、治療薬の副作用がなく、喘息死が起きないことです。
この目標のために患者さんと医師はよく相談し、まだ治療をしていない場合は「無症状が完全なコントロール状態であるとして、コントロール良好の達成と維持」という目標に向けて治療計画を立てます。すでに治療を行っている場合は、現在の治療を考えに入れて重症度を判定し、コントロールされた状態(コントロール良好)を目標にした治療を選択します。
7)重症度の決定と治療法の選択
重症度は、発作の頻度、強さ、夜間の症状と肺機能検査(ピークフローの値)をもとに喘息症状が週に1回もない時は軽症間欠型、週1回以上は軽症の持続型、毎日ある人は中等症、日常生活に支障ある人は重症と診断します。
治療は、重症度の段階に合わせた薬の種類と量が処方されますが、喘息の薬には2種類あり、喘息治療の基本です。発作を予防する長期管理薬と急性の発作を鎮める発作治療薬です。長期管理薬には吸入ステロイド薬を基本に長時間効果のある気管支拡張薬と抗ロイコトリエン薬が併用されます。発作を完全に予防するには症状の無い時も毎日継続することが大切です。発作が起きた時には即効性のある気管支拡張薬の吸入やステロイド薬の内服が行われますが、吸入ステロイド薬を使用せずに安易に吸入の気管支拡張薬だけに頼ると逆に喘息は悪化していきます。コントロール状態を評価して、症状が改善していくと段階が下がり薬の量を減らすことが出来ます。
吸入薬は粉末タイプ、霧状タイプなどいろいろな種類があり、吸入器具、吸入方法に違いがありますので使用法は、医師や薬局で薬剤師から十分吸入できるよう正しい使用法を覚えて下さい。
8)喘息の自己管理法
喘息の症状は、風邪をひく、ほこりを吸う、気象の変化、喫煙、飲酒、過労、ストレスなどの環境因子によって日々変化します。たとえ毎日、吸入を継続していても悪化した時に発作をコントロールできるのは医師ではなく、患者さん自身です。そのため患者さんは医師とよく話し合い、喘息の悪化原因を避け、発作時の対処方法を学んで自己管理する手順を身につける必要があります。具体的には喘息の症状日誌を付け、肺機能の1指標であるピークフロー値を自己測定することにより発作の前兆に気付き、早めに対処します。たとえば発作が起きたら発作治療薬の気管支吸入薬を20分間隔で2~3回吸入し、なお治まらなければ発作用に処方されているステロイド薬を内服して病院を受診します。意識が薄れたり顔色が紫色のチアノーゼになったらすぐ救急車を呼びましょう。
9)喘息患者さんが特に注意すること
①喘息患者の1割にアスピリンなど解熱鎮痛薬を使用して強い発作が起きる人がいます。これをアスピリン喘息といいますが、内服薬だけでなく鎮痛薬の入った張り薬や、塗り薬、目薬、坐薬なども使用しないで下さい。
②高齢者の喘息の人は、肺機能が良くなく喘息死の危険性が高くなります。また、胃内容物が食道を逆流して気管を刺激して発作になったり、心臓疾患を合併している場合があります。
③妊娠中の重症な喘息発作は、流産や胎児発育不全、脳障害の危険性がありますが、専門医と相談しながら適切に喘息薬を使用し、禁煙など環境改善、ストレスを少なくすることにより安心して出産できます。
④外科手術・歯科手術自体ではアレルギー特有の危険性はほとんどありません。麻酔薬、造影剤に使用に対する注意は必要です。
⑤運動誘発喘息
運動することにより一時的に喘鳴や呼吸困難が起きます。特に冬の乾燥した天候で起きやすいですが、多くの場合運動を中止して20分~30分後には自然回復します。
運動誘発喘息が起きるときは、喘息の長期管理が悪い場合がありますので、治療の見直しが必要になります。
10 ) おわりに
喘息は昔のように発作のたびに救急車で病院に駆け込むことや喘息で死亡することはずっと減りました。喘息があっても、医師と良く相談し一緒に喘息治療に当たれば健康な人と同じ様に日常生活を送ることができ、仕事、勉強、運動が可能です。スポーツ選手でも喘息を持ちながら自己管理を徹底することにより、オリンピックでメダルを獲得した多くのアスリートがいます。(スケートの清水選手、羽生選手など)
喘息について良く理解され病気を自己管理する事が大切です。
* 気管支喘息の長期管理のための吸入薬
毎日、定期的に吸入して喘息の状態を改善し、発作を予防します。
* 喘息発作治療のための吸入薬
喘息発作が起きた時に吸入します。気管支が拡張して呼吸苦が改善します。
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